
一個流しとは
一個流し(ワンピースフロー)とは、1つの工程から次の工程へ、1個ずつつくって1個ずつ運ぶことです。ロットはなく、工程間の在庫もありません。部品は、前の工程が手放したときにだけ次の工程に入ります。
主な効果はリードタイムです。最初の1個は、ロット全体を待たずに、各工程の時間を足すだけで出てきます。次の工程が数分以内に不良に気づくので、スクラップも減ります。
例:1分の3工程、10個
1個あたり1分の3つの工程が順に並び、10個の注文があるとします。ロット方式では、各工程が10個すべてを加工してから渡します。一個流しでは、1個が終わるたびにすぐ次へ進みます。
| 指標 | 10個ロット | 一個流し |
|---|---|---|
| 最初の1個の完了 | 3 × 10 × 1 = 30分 | 3 × 1 = 3分 |
| 最後の1個の完了 | 30分 | (3 + 10 − 1) × 1 = 12分 |
| 10個の平均出来上がり時間 | 30分 | (3 + 4 + … + 12) ÷ 10 = 7.5分 |
| 仕掛品(定常状態) | 毎分1個 × 30分 = 30 | 毎分1個 × 3分 = 3 |
| 工程1の不良の影響を受ける個数 | 最大10 | 最大2 |
能力は同じで、毎分1個です。変わるのは、途中で遊んでいる時間と材料の量です。
リードタイムの計算
ロット:LT = m × Q × t | 一個流し:LT = (m + Q − 1) × t
ここで m は工程数、Q はロットサイズ、t は1個あたりの時間(全工程で同じ)です。仕掛品はリトルの法則に従います。WIP = 出力速度 × 通過時間。
| 工程数(m) | ロット Q = 10:m × Q × t | 一個流し:(m + Q − 1) × t |
|---|---|---|
| 3 | 30分 | 12分 |
| 5 | 50分 | 14分 |
| 8 | 80分 | 17分 |
工程が多いほど、一個流しの利点は大きくなります。ただし、サイクルタイムが近いときに限ります。概念の違いはリードタイムとタクトタイムを参照してください。
ペースを決めるのは最も遅い工程
工程3が1.5分で他が1分なら、n番目の部品は 2 + 1.5 × n 分で出てきます。10個目は17分で出ますが、ロット方式では35分(10 + 10 + 15)です。それでも改善ですが、工程3が出力を毎分0.67個に抑えます。
だから一個流しには、タクトに対するラインバランスが必要です。サイクルタイムをタクトに近づけ、他より大きく上回る工程を作らないようにします。
6ステップで導入する
- バリューストリームマッピングを使い、工程順が似た製品ファミリーを選びます。
- 各工程の実測時間を測り、その注文のタクトを計算します。
- 工程の順に、近づけて設備を並べ替えます。典型的なレイアウトはU字セルです。
- どの工程もタクトを大きく超えなくなるまで、作業者間で作業を均します。
- バッファがないと停止が流れ全体を止めるので、SMEDと基本的な保全で段取り替えと停止を減らします。
- ポカヨケと、不良時に工程を止める仕組みで、自働化の考え方に沿って品質をその場でつくり込みます。
まずパイロットセルから始め、前後でリードタイム・仕掛品・スクラップを記録し、そのあとで展開します。
使う場面と使わない場面
| 条件 | 一個流しは機能するか | 対応 |
|---|---|---|
| サイクルタイムがタクトに近い | はい | そのまま適用する |
| 段取り替えが長い | まだ不可 | SMEDで短縮し、小ロットを使う |
| バッチ工程(炉、槽、硬化) | いいえ | 設備の最小バッチを使い、前後は流れにする |
| 停止が多い不安定な設備 | いいえ | 先に安定させる(TPM) |
| 多品種で工程順が異なる | 一部 | ファミリーにまとめ、平準化で均す |
| 工程が離れている、または別の建屋 | 一部 | レイアウトを詰めるか、バッファ付きの連続フローを使う |
一個流しができないときは、小ロットの連続フローを使い、分かれた工程をかんばんによる引っ張り生産でつなぎます。一個流しは目標であって、すべての工程に当てはまる規則ではありません。
よくある間違いと限界
- 時間がアンバランスなまま流れを強制する。速い工程の作業者が待ち、遅い工程に行列ができます。
- 段取り替えを無視する。段取りが長いと、能力の損失がリードタイムの利益を上回ります。
- 安定させる前に在庫をなくす。最初の設備故障や品質不良でセル全体が止まります。
- 一個流しと一個搬送を混同する。長い距離を1個ずつ運ぶと動作が増えます。
- 時間あたりコストだけで判断する。局所的な効率は下がりますが、利益は通過時間・在庫・品質にあります。
- 余裕のない設計。在庫がないため、セルは出勤状況、工具、使用点の材料に左右されます。
よくある質問
一個流しとは何ですか?
工程間で、ロットも中間在庫もなく、1個ずつつくって1個ずつ運ぶことです。
連続フローとの違いは?
連続フローはより広い考え方で、部品が動き続けることです。一個流しは移動ロットが1の理想形です。
例ではリードタイムはどれだけ減りますか?
最後の1個で30分から12分に短縮され、最初の1個は30分ではなく3分で出ます。
すべての工程に向いていますか?
いいえ。バッチ工程、長い段取り替え、不安定な設備では、小ロットや事前の改善が必要です。
生産性は下がりますか?
例では能力は同じで毎分1個です。局所的な遊びが見えるようになるのは、それを隠していた在庫がなくなるからです。
U字セルは必須ですか?
必須ではありませんが、工程を近づけ作業者数を変えやすいので、最も一般的なレイアウトです。
参考文献
- OHNO, T. Toyota Production System: Beyond Large-Scale Production. Portland: Productivity Press, 1988.
- WOMACK, J. P.; JONES, D. T. Lean Thinking. New York: Simon & Schuster, 1996.
- ROTHER, M.; HARRIS, R. Creating Continuous Flow. Lean Enterprise Institute, 2001.
- HOPP, W. J.; SPEARMAN, M. L. Factory Physics. Long Grove: Waveland Press.
- LITTLE, J. D. C. A proof for the queuing formula L = λW. Operations Research, 9(3), 1961.
特記のない限り、参考文献は英語です。
