
統計的工程管理とは
どの工程にもばらつきがあります。同じ旋盤で、同じ作業者が、同じプログラムで加工した2本の軸でも、直径がまったく同じになることはありません。統計的工程管理(SPC)は、このばらつきを活用します。最終検査で問題を見つけるのではなく、チームは工程が動いている間にそれを観察し、振る舞いが変わったときに対応します。
SPCの中心的な道具は管理図です。測定値を時間順にプロットし、中心線と、工程自身のデータから計算した2本の限界線を引きます。限界の内側で並び方にくせがなければ、工程は安定しています。外側に点が出たり、怪しい連が現れたりしたら、何かが変わったということで、不良になる前に注意が必要です。
起源:シューハートから日本の産業へ
ウォルター・A・シューハートは、1920年代にアメリカのベル・システムで働いていたときに管理図を提案しました。NIST/SEMATECH e-Handbook of Statistical Methodsによれば、シューハートのモデルは、プロットする統計量の平均と標準偏差から中心線と限界を決めます。考え方は単純で、システムに組み込まれたばらつきと、原因を特定できるばらつきを分けることです。
W・エドワーズ・デミングは戦後にこの考え方を日本へ持ち込み、統計的管理は日本の製造業の品質の土台の一部になりました。今日、SPCは自動車業界の顧客要求、シックスシグマのDMAICのコントロール段階、そして工程が予測可能であることを示す必要があるあらゆる工場で見られます。
普通原因によるばらつきと特殊原因によるばらつき
| 普通原因 | 特殊原因 | |
|---|---|---|
| 内容 | システム本来のばらつき:材料や温度の小さな違い、通常の摩耗 | 原因を特定できる事象:工具の破損、規格外の材料ロット、変更されたプログラム |
| 頻度 | 常にある | 散発的 |
| 管理図上では | 限界の内側、くせのない点 | 限界を超える点、または不規則でない並び |
| だれが動くか | 経営層。システム(機械、方法、設計)を変えて | その工程の担当者。すぐ、対応計画に従って |
両者を取り違えるのは、SPCで最も高くつく間違いです。小さな自然の揺れのたびに機械を調整すること、デミングが「タンパリング」(過剰調整)と呼んだものは、ばらつきを減らすどころか増やします。特殊原因の合図を無視すると、だれかが気づくまで問題は不良をつくり続けます。
どの管理図を使うか
| 管理図 | 使う場面 | データの種類 |
|---|---|---|
| Xbar-R | 小さな群、2~10個程度 | 計量値(測定値) |
| Xbar-s | より大きな群 | 計量値 |
| I-MR(個々の値) | 1回に1つの測定値:化学のバッチ、炉の温度 | 計量値 |
| p | 不良率、サンプルサイズが変動 | 計数値 |
| np | 不良個数、サンプルサイズが一定 | 計数値 |
| c | 1単位あたりの欠点数、検査範囲が一定 | 計数値 |
| u | 1単位あたりの欠点数、サンプルサイズが変動 | 計数値 |
測定値は、合否のデータよりも多くの情報を持っています。特性が測定できるときは、いつでも計量値の管理図を使ってください。変化をより早く、より少ないサンプルで検出できます。
Xbar-R管理図の限界の計算方法
例:あるセルが公称直径25.00 mmの軸を加工しています。作業者は1時間ごとに連続した5個を測定します(群の大きさ n = 5)。20群のあと、総平均は X̿ = 25.000 mm、範囲の平均は R̄ = 0.050 mmです。
Xbar管理図:UCL = X̿ + A₂·R̄ | CL = X̿ | LCL = X̿ − A₂·R̄。R管理図:UCL = D₄·R̄ | CL = R̄ | LCL = D₃·R̄。
| n | A₂ | D₃ | D₄ | d₂ |
|---|---|---|---|---|
| 2 | 1.880 | 0 | 3.267 | 1.128 |
| 3 | 1.023 | 0 | 2.574 | 1.693 |
| 4 | 0.729 | 0 | 2.282 | 2.059 |
| 5 | 0.577 | 0 | 2.114 | 2.326 |
n = 5のとき、Xbar管理図の上方管理限界(UCL)は25.000 + 0.577 × 0.050 = 25.029 mm、下方管理限界(LCL)は24.971 mmです。R管理図では、UCL = 2.114 × 0.050 = 0.106 mm、LCL = 0です。
管理限界は規格限界ではありません。管理限界はデータから計算される工程の声です。規格限界は図面から取られるお客様の声です。工程が管理状態にあっても公差外の部品をつくることがあり、その逆もあります。
式と定数の出典:NIST/SEMATECH, Shewhart X-bar and R and S Control Charts。
管理図の読み方:特殊原因の合図
限界を超える点は最もよく知られた合図ですが、唯一ではありません。NISTが紹介するウェスタン・エレクトリックのルールは、管理図を1、2、3シグマの領域に分け、次を検出します。
- 3シグマを超える1点、UCLまたはLCLの外側。
- 連続する3点のうち2点が、同じ側で2シグマを超える。
- 連続する5点のうち4点が、同じ側で1シグマを超える。
- 中心線の同じ側に連続する8点。
ルールが多いほど誤警報も増えます。ひと組を選び、手順書に書き、それを守ってください。
合図が出たら、作業者はその工程の対応計画に従います。直前の良好な群以降につくったものをすべて隔離し、班長を呼び、原因を探し(なぜなぜ分析が役立ちます)、管理図の事象記録に書き込みます。これは自働化と同じ精神です。最初の兆候で止めて、不良を後工程に流しません。
SPCを導入する手順
- 重要な特性をいくつか選びます。お客様が感じる特性や、不良を最も多く生む特性です。数十の管理図から始めるのは、SPCを書類仕事に変える最速の方法です。
- 測定システムを検証します。測定器が工程とほぼ同じだけばらつくなら、管理図は結局測定器を測ることになります。ゲージR&R調査で決着がつきます。
- 合理的な群と頻度を決めます。連続した部品をまとめて取り、ずれが不良ロットになる前に捉えられる頻度にします。
- 20~25群を集め、限界を計算して、安定しているか確認します。この期間に特殊原因が出たら、調べて取り除き、再計算します。
- 作業者に、測定し、プロットし、対応する方法を教えます。管理図は目で見る管理の一部として、現場の工程に置きます。
- 工程が本当に変わったときだけ限界を見直します。たとえば、改善が実証されたあとです。
産業の例
- 機械加工:直径と長さをXbar-R管理図で、1時間ごと、または工具交換ごとに1群。
- 食品・化粧品の充填:過充填(コスト)と充填不足(苦情と罰金)を避けるため、正味重量をXbar-s管理図で。
- 射出成形:シフトごとに、バリやショートショットのある部品の割合をp管理図で。
- 自動車の組立:各測定値がデータを記録するナットランナーから来る場合、締付トルクをI-MR管理図で。
- 塗装:塗装部品あたりの欠点数をc管理図またはu管理図で。
まず安定、工程能力はそのあと
工程能力は、安定した工程でしか意味を持ちません。管理図が管理状態にあれば、シグマは σ = R̄ / d₂ で推定できます。例では σ = 0.050 / 2.326 ≈ 0.0215 mm です。軸の規格が25.00 ± 0.10 mmなら:
Cp = (USL − LSL) / 6σ = 0.20 / 0.129 ≈ 1.55。Cpk = min[(USL − 平均) / 3σ, (平均 − LSL) / 3σ]。
工程が25.000に中心化されていれば、Cpkもおよそ1.55です。平均が25.05にずれると、Cpは同じままですがCpkは約0.78に下がります。工程が上限に近づくからです。お客様は一般にCpkの最小値1.33を求め、重要特性や初期調査ではもっと高い値を求めます。お客様の要求は必ず確認してください。
よくある間違い
- 管理限界の代わりに規格限界を引く。
- 点が出るたびに機械を調整し、普通原因のばらつきに反応する。
- シフトの終わりに、監査のためだけに管理図を埋める。
- 毎週限界を再計算して、ゆっくりしたドリフトを隠す。
- 対応計画のない管理図:作業者は合図を見ても何をすればよいかわからない。
- 検証されていない測定器で測る。
効果とチェックリスト
不良と手直しが減ります。ずれがロットになる前に表に出るからです。最終検査への依存が減ります。品質は源流で管理されます。データに基づく判断ができます。管理図は、いつ動くべきか、そして同じくらい大切な、いつ工程に手を出さないべきかを教えてくれます。工程能力調査や改善プロジェクトの信頼できる土台になります。作業者が自分の工程の品質に責任を持てるようになります。
導入チェックリスト:
- 重要特性を選び、理由を示した。
- 測定システムを検証した。
- 群の大きさと頻度を決めた。
- 限界は、安定した20~25群に基づいている。
- 対応計画を文書化し、教育した。
- 管理図は現場にあり、測定の時点で記入する。
- 見つかった特殊原因を記録した事象記録がある。
- リーダーが現場で定期的に見直す。
次の一歩
現場の重要特性をひとつ選び、測定を検証し、20群を集めて、例のように限界を計算してください。特殊原因が出たら、特性要因図で根本から対処し、パレート図で優先順位をつけます。不良が生まれる前に先回りするには、FMEAの記事もご覧ください。
よくある質問
SPCとは何の略ですか?
Statistical process control、統計的工程管理です。統計的な道具、主に管理図を使って工程を監視し、自然なばらつきと特殊原因を切り分けます。
管理限界と規格限界の違いは?
管理限界は工程データから計算され、工程にできることを示します。規格限界はお客様や図面から来て、許容できる範囲を示します。
管理限界を決めるのに何群必要ですか?
限界を固定する前に、安定した工程から20~25群を集めるのが通例です。
Xbar-Rの代わりにp管理図を使うのはいつですか?
データが良品・不良品のような計数値のときです。特性が測定できるなら、Xbar-R管理図のほうが変化を早く検出できます。
SPCはシックスシグマと同じですか?
いいえ。SPCは監視の道具で、シックスシグマはDMAICのコントロール段階でSPCを使う改善プロジェクトの手法です。
参考文献
- NIST/SEMATECH e-Handbook of Statistical Methods. What are Variables Control Charts? https://www.itl.nist.gov/div898/handbook/pmc/section3/pmc32.htm
- NIST/SEMATECH e-Handbook of Statistical Methods. Shewhart X-bar and R and S Control Charts. https://www.itl.nist.gov/div898/handbook/pmc/section3/pmc321.htm
- MONTGOMERY, D. C. Introduction to Statistical Quality Control. Hoboken: Wiley.
- ASQ. Control Chart. Quality Resources. https://asq.org/quality-resources/control-chart
特記のない限り、参考文献は英語です。

