
ジャストインタイム(JIT)とは
ジャストインタイム(JIT)とは、必要なものを、必要なときに、必要な量だけつくり、届ける生産方式です。リーン・エンタープライズ・インスティテュート(LEI)によれば、JITと自働化はトヨタ生産方式の2本の柱です。
目的はムダの徹底的な排除で、最高の品質を最低のコストと最短の生産・納入期間で実現することです。在庫が少ないことはその努力の目に見える結果であって、目的そのものではありません。
実務では、JITは3つのことに同時にかかわります。何をつくるか(注文されたものだけ)、どれだけつくるか(注文された量だけ)、いつつくるか(需要のペースでだけ)です。この3つのどれかに過剰があると、それが在庫・行列・待ちになります。
LEIは、JITの発想をトヨタ自動車の創業者である豊田喜一郎氏の1930年代の考えに帰しています。当時本社工場の機械工場長だった大野耐一氏は、JITに向けた最初の実践的な一歩が1949年から1950年にあったと述べています。つまりJITは単独の購買・物流の手法ではなく、工程間の待ちを減らすために工場の中から生まれ、その後に取引先へ広がったものです。
JITの3つの要素
JITは平準化(heijunka)を土台とし、運用上の3つの要素があります。
| 要素 | 内容 | ツール |
|---|---|---|
| プルシステム | 後工程が必要なものを知らせ、そのときはじめて前工程が生産する | かんばん |
| タクトタイム | 需要のペースに等しい生産のペース | タクトタイムの計算 |
| 連続フロー | 1個ずつつくり、次の工程へ直接流す | 生産セル |
3つは一緒に働きます。タクトがペースを決め、連続フローがそのペースで部品を動かし続け、プルシステムは連続フローが難しい区間を受け持ちます。たとえば2つの工程のサイクルタイムが大きく違う、または離れている場合です。その間に置いたスーパーマーケットが決まった数の部品を保持し、消費が補充の引き金になります。
計算例:タクトタイムと在庫
説明用の例です。ラインは1シフト480分で、昼休み30分と10分の休憩が2回あります。顧客の需要は1日430個です。
- 稼働可能時間:480 − 30 − 20 = 430分、つまり 430 × 60 = 25,800秒。
- タクトタイム:25,800 ÷ 430 = 1個あたり60秒。
- 各工程のサイクルタイムと比較します(下の表)。
| 工程 | サイクルタイム | タクト(60秒)との差 | 1日の能力 |
|---|---|---|---|
| 切断 | 45秒 | 15秒下回る | 573個 |
| 溶接 | 58秒 | 2秒下回る | 444個 |
| 組立 | 62秒 | 2秒上回る | 416個 |
| 梱包 | 40秒 | 20秒下回る | 645個 |
1日の能力 = 25,800 ÷ サイクルタイム(小数点以下切り捨て)。組立はタクトを満たせず、1日 430 − 416 = 14個不足します。差を埋めるには62秒から60秒へ、つまり2秒(3.2%)短縮する必要があります。
在庫。工場は工程間に2,150個を持っています。カバー日数 = 2,150 ÷ 430 = 5日。目標は2日、つまり860個です。削減総量は1,290個で、組立のボトルネックを解消してから段階的に進めます。それまでは、残した在庫が顧客を守ります。
結果の読み方。ほとんどの工程には余裕がありますが、ライン全体のペースは最も遅い工程が決めます。溶接は58秒でタクトまで2秒しかなく、わずかな損失でも超過します。孤立した1工程を速くしても問題が次の工程に移るだけなので、サイクルを55〜58秒前後にそろえるほうが効果的です。
JIT、ジャストインケース、MRP
| 基準 | ジャストインタイム | ジャストインケース(念のため) |
|---|---|---|
| 考え方 | 顧客が消費したときにつくる | 品切れに備えてつくり、ためておく |
| 在庫 | 流れを保つ最小限 | 保険として多め |
| 問題 | すぐ表面化し、解決を迫られる | 在庫の陰に隠れ続ける |
| 前提 | 安定した工程と品質の作り込み | 要求は低いが、コストと場所がかかる |
JITは消費から生産を引っ張ります。MRPは予測と基準日程計画から生産を計画します。多くの工場は両方を使います。購買と長期計画にはMRP、現場の回転の速い品目にはかんばんを使ったJITです。JITは、需要が比較的安定し、製品が繰り返し型で、取引先が近いか信頼できる場合に最もよく機能します。需要が非常に不均一な受注生産でも原則(待ちと過剰の排除)は有効ですが、かんばんをそのまま適用するには調整が必要です。
JITは在庫ゼロではない
よくある誤解は、JITを「在庫をすべてなくすこと」と捉えることです。安定性がないまま在庫を減らせば、工場は停止のリスクにさらされるだけです。LEIも指摘するように、JITには規律が必要です。安定した工程、SMEDによる迅速な段取り替え、TPMによる信頼できる設備、品質の作り込みです。
在庫は、それが隠していた問題が解決されるにつれて、結果として減ります。供給のリスクもあります。在庫が最小限だと、取引先のトラブルでラインがすぐ止まります。答えはJITをやめることではなく、計画することです。重要品目の安全在庫を決め、補充の合図を明確にし、取引先に小口・高頻度で納入してもらい、リスクが大きければ複数の調達先を持ちます。
導入の手順とよくある失敗
- 1つの製品群のバリューストリームを描きます。
- タクトタイムを計算し、各工程のサイクルタイムと比べます。
- 基本を安定させます。5S、標準作業、設備の稼働率です。
- 工程が近く、サイクルが似ているところに連続フローをつくります。
- フローが難しいところには、かんばん付きのスーパーマーケットを使います。
- 在庫を段階的に減らし、出てきた問題を一つずつ片づけます。
順序が大切です。最後の手順である在庫削減から始める人は、ラインが止まるという痛い形で問題を知ります。安定性から始める人は、安心して在庫を減らす資格を得ます。
- 設備と品質が安定する前に在庫を減らす。
- 社内の工程を変えずに、JITを購買の目標としてのみ扱う。
- 安定した需要の合図を渡さずに、取引先へJITを押しつける。
- 需要を平準化せずにかんばんを展開し、波と品切れを生む。
- リードタイムや顧客サービスを見ず、在庫の減少だけで成果を測る。
導入前後で測定してください。リードタイム(原材料の入荷から製品の出荷まで)、日数で表したカバー、手直しとスクラップです。どの効果にも引き換えがあります。在庫が減れば故障への余裕が減り、ロットが小さくなれば段取り替えが増えます。JITがSMED、TPM、標準化と一緒に進むのはそのためです。全体像はリーン生産方式の記事を参照してください。
よくある質問
ジャストインタイムとはどういう意味ですか?
必要なものを、必要なときに、必要な量だけつくり、届けることです。
JITの要素は何ですか?
プルシステム、タクトタイム、連続フローです。土台は生産の平準化です。
ジャストインタイムは誰が考えましたか?
発想は1930年代の豊田喜一郎氏に帰され、大野耐一氏が1949年から実践に移しました。
ジャストインタイムは在庫ゼロのことですか?
いいえ。目的は流れを保つのに必要な最小限の在庫で、問題が解決されるにつれて段階的に減らします。
ジャストインタイムとジャストインケースの違いは何ですか?
JITでは消費が生産を引っ張ります。ジャストインケースでは品切れに備えて保護用の在庫をためるため、問題が隠れます。
JITとかんばんの関係は?
かんばんはプルシステムの合図の道具です。消費によって、補充を許可するカードが解放されます。
ジャストインタイムのリスクは何ですか?
在庫が少ないと、取引先や設備のトラブルでラインが早く止まります。そのため安定性、重要品目の安全在庫、調達計画が必要です。
参考文献
- Lean Enterprise Institute. Just-in-Time Production. Lean Lexicon. https://www.lean.org/lexicon-terms/just-in-time/
- Lean Enterprise Institute. Takt Time. Lean Lexicon. https://www.lean.org/lexicon-terms/takt-time/
- OHNO, T. Toyota Production System: Beyond Large-Scale Production. Portland: Productivity Press, 1988.
- MONDEN, Y. Toyota Production System: An Integrated Approach to Just-in-Time. Boca Raton: CRC Press.
特記のない限り、参考文献は英語です。

