
S&OPとは
S&OP(Sales and Operations Planning、販売・オペレーション計画)は、営業、オペレーション、サプライチェーン、財務が、需要・能力・在庫を1つの計画にそろえ、経営層が承認する月次のプロセスです。部門ごとに別々の数字を持つのではなく、全員が同じ数字で動くことが目的です。
生産計画・生産管理の代わりではありません。S&OPは製品ファミリー単位で月単位の総括計画を決め、生産計画がそれを日・週単位の詳細な日程に落とし込みます。
月次サイクルの5ステップ
- 製品レビュー:今後の月に影響する新製品の投入、終息、構成の変化。
- 需要計画:統計的な予測を、営業とマーケティングがキャンペーン、契約、季節性で調整します。結果が合意された需要計画です。
- 供給計画:オペレーションが需要を生産能力、在庫、資材の入手可能性と照らし合わせ、資源が足りないところを示します。
- プレS&OP会議:マネージャーが意見の相違を解消し、代替案とそれぞれのコストを添えて、推奨案を経営層に提示します。
- 経営会議:経営層が決定して計画を承認し、アクションと担当者を記録します。承認された計画がその月の基準になります。
例:1つの製品ファミリーを4か月
架空の例です。ファミリーXの通常能力は月10,000個、残業で月最大1,500個を追加できます。期首在庫は2,000個で、10月末も2,000個にするのが目標です。各月の期末在庫は次の式で求めます。
期末在庫 = 期首在庫 + 生産 − 需要
工場が通常能力だけで生産すると、9月に計画が破綻します。1,500 + 10,000 − 12,500 = −1,000個、つまり欠品です。S&OPは不意打ちをなくし、先に対応を決めます。承認された計画は次のとおりです。
| 月 | 需要 | 生産 | 残業 | 期末在庫 |
|---|---|---|---|---|
| 7月 | 9,000 | 10,000 | 0 | 3,000 |
| 8月 | 11,500 | 10,000 | 0 | 1,500 |
| 9月 | 12,500 | 11,500 | 1,500 | 500 |
| 10月 | 9,500 | 11,000 | 1,000 | 2,000 |
| 合計 | 42,500 | 42,500 | 2,500 | 2,000 |
期首と期末の在庫が同じなので、需要の合計(42,500)は生産の合計(42,500)と等しくなります。4か月の通常能力は40,000個で、足りない2,500個は残業で補います。経営会議での判断は次のとおりです。2,500個分の残業コストを受け入れる、9月の生産の一部を8月に前倒しする、9月の注文の一部について納期を交渉する。どの選択肢にもコストとリスクがあり、経営層が見るべきものはそこです。
誰が参加し、各部門は何を持ち寄るか
| 部門 | 会議に持ち寄るもの | 受け取りたいもの |
|---|---|---|
| 営業 | 受注、商談、キャンペーン | 納品可能な内容の確認 |
| オペレーション | 能力、ボトルネック、設備停止 | 現実的で安定した需要 |
| サプライチェーン | リードタイムと資材リスク | 十分前もっての購買予測 |
| 財務 | 予算、キャッシュ、在庫コスト | 金額で表した計画 |
| 経営層 | 戦略と優先順位 | 判断すべき明確な代替案 |
対象期間、ファミリー、頻度
S&OPは個々の品目ではなく、製品ファミリーで進めます。対象期間は通常12〜18か月で、毎月見直します。直近の月は凍結するか、承認があるときだけ変更し、新しい注文のたびに生産計画が乱れないようにします。承認された計画は基準生産計画(MPS)に引き継がれ、続いて資材所要量を計算するMRPに入ります。
追うべき指標
- 予測精度:ファミリーごとの予測と実績の比較。この数字がないと、合意はただの意見になります。
- 計画遵守率:承認された生産計画のうち、その月にどれだけ達成できたか。
- サービスレベル:欠品なく、納期どおりに届けた注文の割合。
- 在庫の日数:販売日数で見た、目標に対する水準。
- 出席と意思決定:開催した会議の数と、期限内に完了したアクション。
これらの指標は経営層向けのダッシュボードに載せます。
複雑にせずに始めるには
- 会社全体ではなく、主要なファミリーを2〜3個選ぶ。
- カレンダーを決める:毎月、同じ週に固定日で開催する。
- ファミリーごとの需要、能力、在庫を1つの表計算シートにまとめる。
- ソフトウェアを考える前に、5ステップを3サイクル回す。
- 決定事項を記録し、翌月に何が実行されたかを確認する。
経営層は経営会議に必ず出席します。いなければ、S&OPは意思決定の場ではなく情報共有の場になります。
よくある間違い
- 日程調整の会議として扱う:ファミリーや目標ではなく、注文や品目を議論してしまう。
- 責任者のいない予測:売上の数字に誰も責任を持たず、計画が毎週つくり直される。
- 能力を無視する:工場がこなせない需要を承認する。
- 財務が参加しない:計画が予算やキャッシュとつながらない。
- フォローがない:翌月に誰も確認しない決定。
よくある質問
S&OPは何の略ですか?
Sales and Operations Planning、つまり販売・オペレーション計画です。需要、能力、在庫をそろえる月次のプロセスです。
S&OPと生産計画の違いは何ですか?
S&OPは数か月の期間でファミリー単位の総括計画を決めます。生産計画は、その計画に沿って日・週単位で生産を日程化し、管理します。
S&OPのステップは何ですか?
製品レビュー、需要計画、供給計画、プレS&OP会議、経営会議の5つです。
S&OPには誰が参加すべきですか?
営業、オペレーション、サプライチェーン、財務、そして経営会議で最終判断を下す経営層です。
S&OPはどのくらいの頻度で行いますか?
月に1回、12〜18か月の計画期間で行います。
小さな会社にもS&OPは必要ですか?
はい。簡単な形でかまいません。表計算シート1つ、ファミリー2〜3個、月1回1時間の会議で、販売と生産はすでにそろいます。
参考文献
- WALLACE, T. F.; STAHL, R. A. Sales & Operations Planning: The How-To Handbook. T. F. Wallace & Company.
- LING, R. C.; GODDARD, W. E. Orchestrating Success: Improve Control of the Business with Sales & Operations Planning. Wiley, 1988.
- SLACK, N.; BRANDON-JONES, A.; JOHNSTON, R. Operations Management. Pearson.
- CHOPRA, S.; MEINDL, P. Supply Chain Management: Strategy, Planning, and Operation. Pearson.
特記のない限り、参考文献は英語です。
